学術フロンティア講義「気候と社会」第2回目の講義は、気候科学の第一人者である江守正多教授(本学未来ビジョン研究センター教授、総合文化研究科広域科学専攻客員教授、国立環境研究所上級主席研究員)をお招きし、「気候変動問題の論争をどう見るか」をテーマに、論争の中で情報を見分ける重要性について解説いただきました。

講義の主な論点は以下の通りです。

  • 地球温暖化の原因が人間活動によるCO2であることの論拠
  • 客観的なデータに現れる気候危機
  • 気候変動対策の世界的実情
  • 信頼できる情報を見極めるリテラシー

 江守教授から、本講義で気候変動問題を扱っていくにあたり、ネット上などで見られる様々な懐疑論に言及し、その誤りの部分を指摘することで、本講義の主題を正しく理解してほしいとメッセージがありました。まず、温暖化の主な原因は人間活動に由来する温室効果ガスであることは科学的エビデンスから疑う余地がなく、太陽活動の影響では説明できないことなどが示されました。また、気候危機は過大評価である、といった言説に対しても、平均気温1℃上昇の影響や、大雨・台風増加の影響が具体的に示されました。ただし、深刻さの認識は価値判断にも依存することが説明されました。日本だけの対策では意味がないという主張には、中国で再エネ目標が超過達成されていることなど、既に世界的に対策が進みつつある状況が示されました。この中で、懐疑論の多くは都合の良いデータだけを切り出して議論を展開しており、幅広く情報を集めることで回避できること、科学的な確実性を論点にし続けることも懐疑論の戦術の一つとなっていることなどが説明されました。信頼できる情報を見分けるために、論理の整合性、引用等の正確性、バイアスなどに注目するとともに、自分自身がもつバイアスを内省する姿勢も大切であると締め括られました。
 講義に続いて、受講生間で意見交換の場を持ち、各々が感じたことを話し合いました。

<まとめ:中崎城太郎>