学際フロンティア講義「気候と社会」第9回目の講義は、生態学者である吉田丈人准教授(本学大学院総合文化研究科・総合地球環境学研究所(兼務))をお招きし、「気候変動時代の災害を考える」をテーマに、生態系を活用した防災減災の事例と適応策についてお話しいただきました。

講義の主な論点は以下の通りです。

  • 極端な気象がもたらす災害
  • 災害リスクの要素
  • 現在進行中の気候変動
  • 自然がもたらす多くの恵み
  • 自然を活用した地域づくり
  • 地域の自然と文化・歴史
  • いまなぜ「生態系を活用した防災減災」(Eco-DRR)か?
  • 生態系・生物多様性の現状、自然資本の現状
  • 福井県三方五湖の災いと恵み
  • 滋賀県比良山麓の災いと恵み
  • 自然の恵みと災いからとらえる土地利用の重要性

 吉田准教授からは、気候変動対策として自然資源をどのように利活用していくかについて、お話いただきました。吉田先生は全国多数のフィールドで地域研究を実施されており、地域の歴史から学ぶ災害対応の調査・研究の積重ねがグローバルな防災減災政策にも役立つことをご説明くださいました。2021年に流域治水関連法に生態系を活用した防災減災の概念やグリーンインフラの用語が取り込まれる等、自然を活用した水害対策に注目が高まっています。しかし、歴史を振り返ると日本では霞堤や河畔林等、伝統技術を用いた治水を行ってきたことがわかります。講義では、自然は災い(災害)と恵み(生態系・生物多様性による環境と人への便益)のどちらももたらすものであること、気候変動時代の今だからこそ、先人たちの知恵から学び⾃然の恵みを活かしがならも災いを避ける持続可能な地域づくりをしていくことが望ましいことについて、土地利用の総合的な評価についても触れながらご教示くださいました。

<まとめ:田代藍>