学術フロンティア講義「気候と社会」第11回目の講義は、エネルギー総合学連携研究機構長を務められている松橋隆治教授(工学系研究科電気系工学専攻)をお招きし、「地球環境とエネルギー -カーボンニュートラル社会実現の為のイノベーション-」をテーマとして、求められるイノベーションの姿について解説いただきました。

講義の主な論点は以下の通りです。

  • 社会技術体制の移行に関する理論
  • エネルギーシステムのセキュリティ維持とカーボンニュートラル化
  • イノベーションの類型
  • カーボンニュートラル社会実現の為のグリーンイノベーション
  • グリーンイノベーションをグリーン成長へとつなげるには?

 松橋先生から、まず、社会技術体制の移行に関する理論や、気候変動に関する科学の発展と人類の対応の歴史について詳しく解説いただきました。その上で、気候変動への適応策やエネルギー供給の安定性確保も考慮しつつ、カーボンニュートラル社会の実現を図る戦略が重要であることを示されました。ここで、シュンペーターの「経済発展の理論」のイノベーション類型を参照し、5種類のグリーンイノベーションを挙げられました。その5種類について、「プロセスイノベーション」の例として、高炉での廃熱再利用や水素利用、CO2回収、「プロダクトイノベーション」の例として、機器の省エネ化や自動車の燃費改善、「マーケットイノベーション」の例として、固定価格買取制度による再生可能発電技術の普及促進、「サプライチェーンのイノベーション」の例として、発送電分離や自由化などの電力システム改革、「制度・組織のイノベーション」の例として、トップランナー基準方式について、それぞれ具体的にご説明いただきました。カーボンニュートラル社会実現の為の複合的イノベーションの例として、沖縄でのPPA(電力購入契約)事業の成功例を紹介された上で、グリーンイノベーションをグリーン成長に導くために、複数のイノベーションを適切に組み合わせシナジー効果を発揮させること、例えば、エネルギー環境分野の研究開発を進めることによりプロセスイノベーションやプロダクトイノベーションの可能性を広げ、開発された技術の社会普及を促すようなマーケットイノベーションや規制改革などによるビジネスモデルのイノベーションを適切に組み合わせていくことが必要であると締め括られました。

<まとめ:中崎城太郎>