学際フロンティア講義「気候と社会」第3回目の講義は、気候力学の第一人者である小坂優准教授(東京大学先端科学技術研究センターグローバル気候力学分野)をお招きし、「気候の人為起源変動と自然変動」をテーマに、気候システムのメカニズムについてお話しいただきました。
講義の主な論点は以下の通りです。
- 主に19世紀後半からの全球平均地表面気温の上昇とその要因
- 気候変動の要因
- 気候システムの外的強制力(エアロゾル、オゾン、温室効果ガス等)と内部変動(エルニーニョ・ラニーニャ現象、偏西風の蛇行現象等)
- 人間の気候変動への影響に関する「検出」と「要因特定」
- 世界平均表面気温の上昇とその要因
- 多様な指標からみた気候の変化と人為的影響
- 地域規模の気候変動とその要因
―サヘル、南米南部の事例 - 今世紀初めの地球温暖化の「停滞」と内部変動の役割
IPCC第6次評価報告書の主執筆者でもある小坂先生からは、主に気候モデルを用いて、自然起源のみの強制力を与えた場合と人為起源と自然起源の影響を同時に与えたシミュレーションに見られる、気温上昇の変化とその要因についてご教授いただきました。地球温暖化への人為的影響は、IPCC第5次評価報告書の「可能性が極めて高い」から、第6次報告書の「疑う余地がない」という報告の変化にも表れているように、人間の気候変動への影響を示す根拠は、過去から現在までの膨大な観測データや要因特定の研究成果によって裏付けられていることをお話しいただきました。人為起源にはエアロゾル等、気温上昇に対してマイナスに作用する要素もあり、人間の気候変動への影響はどのような気候変動指標に着目するかで要因の寄与が異なること、自然変動への理解も含め、地球規模・地域規模の多様な気候変動指標への影響を明らかにしていく重要性についてお話しいただきました。