4月11日に学術フロンティア講義「気候と社会」が開講されました。本講義では、気候変動がもたらす社会への負の影響について、自然科学・社会科学・人文学といった分野横断的な視点から、各分野の第一人者である講師陣をお迎えし、オムニバス形式のトランスフォーマティブなサイエンス授業を展開していきます。
オンラインで実施された 第1回目の講義は、気候と社会連携研究機構の機構長である沖大幹教授(本学総長特別参与・大学院工学系研究科)から「気候変動と相互作環の学術を俯瞰する」をテーマに「気候と社会」を学ぶ重要性についてお話しいただきました。
講義の主な論点は以下の通りです。
- なぜ気候と社会を学ぶのか?
- 温室効果ガスと気候変動に関する研究の歴史と現状
- 化⽯エネルギー利⽤へのパリ協定の含意
- 種々の社会経済シナリオと気候変動総費用
- 「最適な」気候変動対策について
沖教授から、この講義を通じて「どうして気候変動問題は解決しないのか」を考え、気候変動の地球物理学的な仕組みや社会経済的な背景を理解するという目標が示されました。⼈為起源の気候変動が自然変動に比べて急激であることが懸案であり、将来予測は今後の社会次第であること、極端な気候変動対策には副作⽤の懸念もあり、利⼰的に考えても持続可能な社会の実現が合理的な策であることなどが講義されました。想定される悪影響と対策費⽤が不確実性の範囲で同程度なので論争がつきないが、気温上昇を何℃まで許容するか、ということより、どのような社会経済シナリオをとるかによって、気候変動の緩和費用も悪影響も大きく異なり、持続可能社会では気候変動総費用が最も低くなることが説明されました。講義の中で、化石燃料が枯渇して使えなくなるのではなく、あっても温暖化防止のために使わなくなることを我々はパリ協定で選択したのだということを強調されました。気候変動対策推進には経済成⻑が不可⽋であり、環境か経済かの二択ではなく、相互に依存すべきものである、という内容で締め括られました。