学際フロンティア講義「気候と社会」第12回目の講義は、気候政策学がご専門の杉山昌広准教授(未来ビジョン研究センター、大学院総合文化研究科(兼任))をお招きし、「持続可能性へのトランジションの視点から考える脱炭素社会」をテーマに、環境エネルギー政策の観点から見た「気候と社会の問題」についてお話しいただきました。
講義の主な論点は以下の通りです。
- 脱炭素社会への移行
- トランジション研究の流れ・特徴
- 政策ミックスの重要性―整合性と国際的な視点
- 緩和策の例(経済的手法、規制的手法、その他)と太陽光の事例
杉山准教授からは、エネルギー需給と価格変動及び種類の転換は、技術のみならず政治・社会とともに一体的に変革していく社会技術システムとして捉えていく重要性についてお話しいただきました。20世紀の石油の時代から、21世紀の太陽光をはじめとした再生可能エネルギーの時代へと転換する現代では、技術経済的側面と社会政治的側面の相互作用が重要であり、脱炭素社会への移行は、温暖化対応策としても産業構造や経済社会の変革をもたらすものである、という解説がなされました。社会技術システムのトランジションはシステム・イノベーションと理解できます。
世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるには、2050年代にCO2排出の「ネットゼロ」が必要であり、対策が進んでいるものの更なる対策が必須という話がありました。日本においても世界の動向にあわせて、2030年度までに2013年度比で46%削減、2050年までに正味排出量ゼロの政策目標を掲げています。現在日本では、コストが高い再生エネルギーがありますが、そうした種別のエネルギーにこそ技術革新と初期市場創造の政策が必須であり、単一政策ではなく、経済的手法や規則的手法といった複数の手法をあわせた政策ミックスで整合性をとる姿勢が大事であることをご教授いただきました。
<まとめ:田代藍>