学際フロンティア講義「気候と社会」第5回目の講義は、古気候学の第一人者である横山祐典教授(本学大気海洋研究所、大学院理学系研究科、大学院総合文化研究科)をお招きし、「炭素循環から捉える気候変動」をテーマに、氷期―間氷期のサイクルと地球温暖化における炭素循環についてお話しいただきました。
講義の主な論点は以下の通りです。
- 地球史スケールと“人新世”の炭素循環と気候の俯瞰の重要性
- 大気二酸化炭素と地球の気温
- 気候とフィードバック(アルベド・温室効果ガス等)
- 表層環境復元研究
- 繰り返す大規模気候変動―氷期・間氷期
- 大気と海洋間での炭素循環
- 海洋の循環による14Cの海域差
- 気候変動と社会
―炭素循環とネガティブエミッション、気候変動と社会 - 気候変動と安全保障
横山教授からは、地球化学・古気候学の観点から、氷期―間氷期のサイクルと地球温暖化における炭素循環についてお話いただきました。横山教授は世界でも10機ほどしかないタイプの加速器質量分析装置を用いた超高感度高精度分析を行っており、熱帯から南極までカバーする全球の気候変動のメカニズムについて研究されています。講義では、海の存在によって効率的に大気組成を行うユーレイ反応と大気中のCO2や温室効果との関係についてご教示いただきました。地球の公転軌道と温室効果ガスは気候を左右する2大要素であり、その他地球と太陽との関係、海洋循環、大気、氷床等も気候を駆動する要素であるといった解説がなされました。氷期―間氷期は人類誕生以降の地球の歴史の中で繰り返される大規模地球変動の特徴であり、大気と海洋間での炭素循環及び炭素同位体である14Cの濃度変動を手掛かりに、過去の気候変動を明らかにしたり、将来予測に活用したりすることの有用性についてご教示いただきました。