学際フロンティア講義「気候と社会」第7回目の講義は、海洋生態学を専門とする岩田容子准教授(本学大気海洋研究所)をお招きし、「気候変動が海洋⽣態系に与える影響」をテーマに、気候変動と海洋生物との関係についてお話しいただきました。

講義の主な論点は以下の通りです。

  • 私たちの暮らしと海
  • 今、海で生じている変化
  • 温暖化による生物分布・フェノロジーへの影響
  • 気候変動が海洋生物・プランクトンに影響する例
  • 低次のMatch-Mismatchが⾼次捕⾷者に影響する例
  • 南極・北極の温暖化が海洋生物に影響する例
  • 海の貧酸素化が海洋生物の行動に影響する例
  • 生物進化の可能性

 岩田准教授からは、海洋生態学・行動生態学の観点から、温暖化・酸性化・貧酸素化など気候変動が海洋生物の生態や個体群動態に影響するプロセスについてお話いただきました。気候変動が海洋生物にもたらす直接的な影響の因果を説明することは難しいものの、温暖化などの海洋環境の変化に対し、海洋⽣物が応答していることは明らかであることをご説明いただきました。また、海洋生物の環境応答のトリガーや感度は種によって異なることから、気候変動や温暖化への応答に種間でずれが生じ、捕⾷ー被⾷関係のミスマッチを通じて個体群動態に影響する可能性についても解説いただきました。また漁獲や気候変動が人為的な淘汰圧となり生物進化をもたらす可能性についても議論しました。講義全体を通して、各種の⽣態・種間相互作⽤とその進化メカニズムを深く理解することは、気候変動への⽣物応答を予測する上で極めて重要であることをご教授いただきました。

<まとめ:田代藍>