学術フロンティア講義「気候と社会」第5回目の講義は、同位体気象学の第一人者である芳村圭教授(本学生産技術研究所グローバル水文予測センター、宇宙航空開発研究機構地球観測研究センター・センター長)をお招きし、「気候と社会をつなぐ物質:水」をテーマに、気候変動に関する陸域水循環モデルについてお話しいただきました。

講義の主な論点は以下の通りです。

  • IPCC WGII報告書について
  • 気候変動の影響の顕在化(豪雨、洪水、干ばつ、山火事等)
  • 国内外の気象災害の事例
  • 日本の洪水予報の法規制の動向
  • 水文学的干ばつ
  • 水循環・陸域モデリング研究を通じた地球システムモデル開発

 芳村教授からは、気候変動に伴う極端現象が既に顕在化していること、すなわち、世界的に洪水が高頻度で発生している一方で干ばつが深刻化する地域があること、温暖化で今後も気象災害が高頻度化・激甚化することが予測されていること等についてご教示いただきました。国内外の気象災害の事例をご紹介いただき、それらに対して、芳村教授が研究されている高精度な洪水予測が有効であることなどを示されました。これまで許可されていなかった民間による洪水予測が、法改正など解禁の方向で進んでおり、高精度予測による被害軽減が期待されます。いっぽう、世界的には干ばつの顕著な増加が見られる地域があり、たとえば2℃上昇シナリオと4℃上昇シナリオでどのように現れてくるか示されました。これらの地域では、前例のない干ばつ状態が発生するまで残された時間がないこともご説明いただき、豪雨・洪水と干ばつという両極端の現象が増える状況について解説いただきました。授業の後半には、研究開発されている陸面モデルMATSIRO、河川モデルCaMa-Flood、統合陸域シミュレータ(ILS)などについてもご紹介いただきました。
 授業の最後には受講生同士で意見交換し、メリットはないのかといったことも含め、様々な角度から現状を捉えることで、気候変動の課題に対する理解を深める機会となりました。

<まとめ:中崎城太郎>