学際フロンティア講義「気候と社会」第8回目の講義は、環境生態学の第一人者である森章教授(本学先端科学技術研究センター)をお招きし、「生物多様性と気候変動の課題」をテーマに、生物多様性と気候変動との関連についてお話しいただきました。
講義の主な論点は以下の通りです。
- 気候変動の危機×生物多様性の危機
- UNFCCC COP27,CBD COP15での最新動向
- 第6の大量絶滅の時代
- 生物多様性と人間の福利(栄養、食料、心身の健康等)
- 生物多様性の役割(炭素回収・貯蔵、大規模植林、森林再生、生態系再生等)
- 自然と人との新たな関係(Nature-based Solutions)
- 気候変動緩和と生物多様性の保全
- 気候解決策としての生物多様性
森章教授からは、生物多様性と気候変動の課題は相互依存の環境問題でありながらも、生物多様性については世界的に見ても関心や注目度が低いという話がありました。その一方で、国連責任投資原則に森林保全・生物多様性保全の取組が投資判断に盛込まれていること、「遅くとも2030年までに生物多様性の損失を逆転させ回復させる」ネイチャー・ポジティブの実現に向けた取組み、グローバルな自然共生社会に向けた活動が高まっていることをご解説いただきました。グローバルリスクとしての生物多様性の喪失は、気候変動や温暖化に限らず、感染症パンデミックとも密接に関連しており、生物多様性保全に取組むことは感染症等の予防策として、費用対効果として経済的にも公衆衛生学的にも有効であることをご説明いただきました。講義全体を通して、生物多様性保全が単に生物種の減少、絶滅のみならず、気候変動の負の影響が懸念される中、その対応策として、人間と地球環境に様々な恩恵を与えていることをご教授いただきました。
<まとめ:田代藍>